No.39

●2024.6.24
 「お前そのジャンル遍歴でなんで読んでないんだ」漫画ランキング(自分調べ)の長年1位だった、日出処の天子を読みました。
 とてもおもしろかったです。
 ハッピーエンドとか、バッドエンドとか、そういうなにかに括れない……というか、ただ人間が生きていた(生きている)だけを創作物として描ききった作品と思いました。
 最後がバッドエンドなのは有名なので中々人を選ぶけど、私はわりと好きなバッドエンドなんだよな〜〜なぜならその後も人生が続いていくから。それが巨大な絶望であり、かすかなる希望。最後の1ページが本当に秀逸。この一文を読むために長い小説を読んでいた、みたいなやつ。ラスト1ページがすべてを包み込む。厩戸の人生がはじまる。
 最後に残った感情をひとつ上げるとするならば、狂気なんだけど、その狂気はそのままに「それでも生きていく」を描いた。
 山岸先生の巻末インタビューで『それでも人は生きるのです。狂っても生きていく。生き抜くというか……』という言葉がそのままに表れていました。
 漫画(に限らず創作物)において、狂気というのはその人の行き止まりだったり、(悲しい)結末として描かれることが多いけど、「それでも生き抜く」を描けるのに、すごく感動しました。また、それを「楽観主義」という言葉で現していたのも底知れぬ強さがあって、すごく好きでした。私も生きていこうと、素直に思えた作品でした。
 あんな微細な絵柄でこれほどまでに力強い作品を書くんだから、怖さすら感じる。山岸先生は「狂っても生きる」を描くし、萩尾先生は「絶望するけど生きる」を描く、そこには底知れぬ悲しさがあるけど、果てしない明るさもある。それすら不条理なんだけど、生きることが尊くも思える。
 「生きる存在そのものが祈りなのである」が結論の「宝石の国」にもかすかに通じている世界観だな、とも思いました。(宝石も日出処も仏教絡みだしね。)「宝石の国」のラストがなんだかとても甘く温かくも感じました。

(「狂気、狂う」という言葉が今のこの世に正しいかどうかは分かりませんが、当時山岸先生もおっしゃってたので、感情表現としてのひとつとして使いました。別の言い方をするなら、やるせなさ、報われなさ、とかそういった類のもの……。)

 メディアミックスを調べたところ、アニメ化が頓挫してるとのことで、残念。なにかしらのメディアミックス見てえ〜〜。でも、ちょっと難しいかもな。

 あと、山岸先生は少女マンガらしい美しい内面描写と少年漫画らしい展開の期待(わくわく感)を両立させるのがすごくうまいな!と思います。雨が降るのか?!の下りとか、スポーツ漫画の勝敗が読めない展開を読んでるくらいそわそわした。舞姫テレプシコーラのときも、ずーっとわくわくしてたし、楽しかった!

 ここ数年漫画というものを読んでなかったけど、久々に読んだら超楽しかった!これからたくさん読みたい。畳む

感想